絶対音感トレーニングをスムーズに進めるための重要な3要素

先週のレッスンで、3歳から絶対音感トレーニングを始めた6歳の生徒さんが、黒鍵の和音も含め14種類の和音が全部聴きとれるようになり、また和音の構成音もミスがゼロになったため、ようやく最後の段階、単音の固め弾きの練習に入った。単音の絶対音感が身に付くまでもう秒読み段階に入り、終わりが見えて来た。

 

この生徒さんはトレーニング開始時からトレーニングを一度も嫌がることなく、治療トレーニングもほどんど施すことなく、非常にスムースに、とんとん拍子で進めることができた数少ない生徒さんである。通常は、旗の数が7本に増えたころからなかなか和音が覚えられず、ミスが減らすために治療トレーニングを何回も経てようやく全ての和音を覚えることができる生徒さんがほとんどだが、この生徒さんに限っては、そういうことがほとんどなかった。一時期、確か9本目の茶色の旗が増えた時にピンクと茶色のミスが減らない時に治療トレーニングを2~3週間行い、また黒鍵の和音でも治療トレーニングを1回行ったが、治療トレーニングを行ったのはその2回だけで、しかも1か月未満の短期間で済んだ。

 

その要因としてあげられるのは、この生徒さんのご両親が、トレーニング開始時から毎日欠かさず1日5回必ずトレーニングをさせていたことが大きい。病気以外は一度もさぼったことがない。また、親御さんの子供に対する接し方を見ていると、子供が親の言うことをよく聞くようにきちんと躾けされており、レッスン中に親御さんや私に対してわがままを言ったり、自分勝手な行動をすることが全くない。

 

また、この生徒さんは幸い、記憶力が非常に高いので、一度覚えたものは英語でも決して忘れることがなく、なんと1年前に私や親御さんの言ったことまで覚えている、驚異的な記憶力の持ち主でもあるので、それも幸いしていたのだと思う。

 

けれども、もう一人、現在4歳の生徒さんで、この生徒さんも入会時から絶対音感トレーニングが順調に進んでおり、現在はもう9本の白鍵の和音を全て聞き取れるようになった。この生徒さんは、特に記憶力が高いというわけではないが、高い集中力がある。このお子さんも親御さんの躾がきちんとされており、トレーニングも1日5回必ずきっちり行い、レッスン中にだだをこねたり、わがままを言ったりすることはほとんどない。音を覚える吸収力は、普通の生徒さんよりも早いので、あと半年~1年もすれば絶対音感が身に付くであろう。

 

こうして見ると、絶対音感トレーニングをできるだけスムースに進め、長期化しないようにするためには以下の要因が考えられる。

①1日5回毎日必ずトレーニングをしている。

②子供の躾がきちんとされている。親が子供に振り回されていない。

③自宅でのトレーニングが集中できる環境にある。(これは昨年からオンラインレッスンを始めたことで、生徒さんのご自宅のピアノがどのような環境に置かれているのかが把握できました。残念ながら、ピアノの周りに色々とごちゃごちゃ物が置いてあるご自宅のお子さんは集中力があまりありません。)

 

③の要素も実はとっても重要なことなのである。お子さんの集中力を保つには、ピアノの周りには一切何も置かないことが重要だ。何故なら、小さいお子さんは常に目をきょろきょろさせ、何か気になるものがあるとそっちの方が気になって集中できなくなるからだ。

 

ともあれ、これら3つの要素が満たされていても、人間には個人差があるため、進みが遅い生徒さんもいる。しかし、子供が嫌がったり反抗せず、ちゃんとやれているようであればほぼ100%の確率で絶対音感が身に付くので心配することはない。確かに、他のお子さんと比べて進度が遅いことに焦ったりすることがあるかもしれないが、それは親御さんの方で、子供はそんなことは全く気にしていない。けれども、この3つの要素がちゃんと出来ていない場合は、絶対音感を身に付けるどころか、トレーニングすること自体が大変になり、挫折することは、これまでの経験から明らかである。

2021年06月21日