ほめると子供はダメになる

「うちの子は褒めると伸びるタイプなので、褒めてあげてください。」

 

この様な発言をされる方がたまにいらっしゃる。聞かされる方は一瞬、「えっ!?」とたじろいでしまう。何故なら、褒める褒めないは人から言われてすることではないし、褒めて伸びるタイプかどうかはこちらで判断することだからだ。

 

残念ながらこのような発言をされる親御さんは、お子さんを甘やかしているケースが多い。子供を甘やかしすぎて真実が見えなくなっているため、第3者からどのように見られているのか分からないのだ。

 

これを誤解する多くの日本人は、海外では褒める子育てをしている、という一面だけに囚われてしまい、ゆがんだ子育てをしているように思う。私はアメリカに長く住んでいたので、向こうの家庭の子育てを拝見する機会が何度があったが、子供を持っている私の友人たちは、躾けに関しては非常に厳しく、子供が悪いことをしたらお尻を叩く、といった体罰は当たり前なのである。こういった現状を知らず、褒めることばかりに焦点を当てた子育て特集やマスコミの報道に疑問を感じる。

 

先日、本屋さんにいったら、このような本を見つけた。

 

「ほめると子どもはダメになる」

 

これを見つけた時、何て斬新なタイトルなのだ、と思った。この本によると、日本の子供の場合、褒めてばかりの子育ては子供がダメになることが多いと書かれている。海外とは事情が違うからだ。中身を読んで見たら、なるほどと思われることが多い。

 

この本によると、アメリカ、フランス、日本と比較して、子供が親の言うことを良く聞くことを望む親が、欧米では80%前後なのに、日本ではたったの12%くらいなのだ。親の言うことを良く聞かない子供は、先生や他の大人の言うことを聞くことはまずない。この様なお子さんは、学校の成績もあまりよくなく、社会に出ても成功することはない。

 

また、子供に体罰は必要か、の質問に対して、欧米ではほぼ70%くらいに対して、日本はわずが10%程度

 

これらの統計を見れば、日本の子育てがいかに甘いものかがおわかりになるであろう。

 

日本では虐待になるから、と子供への体罰が否定的な親御さんが大変増えてしまったが、では欧米ではどのような時に子供に体罰をするのか?それは、家庭や他人との約束事やルールを破った、人に迷惑をかけた、人として間違った行動をとった時、だそうである。行儀が悪いお子さんに対しても体罰をする親御さんも多い。しかし一方で、子供ができないことに対して(例えばサッカーが上手くできない、フォークが上手く持てない、など)は決して叱らないそうである。

 

今の日本はどちらかというと、子供ができないことに対して親がイライラして怒鳴ったり、手を上げたりすることが多く、人との約束を破ったり、人に対して悪い言葉を使ったり、行儀が悪いことに対しては大変甘いのではなかろうか?

 

本来、叱ってはいけないところで叱るから、日本人は大人になってもどこか自分に自信がない、性格がどこか歪んでしまうのではなかろうかと思う。

 

当教室では、小学校に上がったお子さんの場合は、決して褒めるだけのレッスンはしない。私は、厳しさと優しさのバランスが重要であると考えている。基本は、子供をいつも励まし、上手にできた時には褒め、必要な時には叱る、というメリハリが必要だと思うが、今の先生は、学校の先生もそうだが、親御さんからのクレームを恐れているのか、指導力のない優しい先生が増えてしまったように感じる。

 

指導者はただ優しいだけでは、決して子供のためにならない。それに、何でもない所で褒めたところで、敏感なお子さんの場合は、それが本当に褒めているのかそうでないのかは、見抜かれるのである。指導者として、信頼されるべき人であるには、やはり嘘はいけない。いい時はいい、悪い時は悪い、とはっきり言える指導者でなければ、生徒さん、親御さんからの尊敬・信頼は得られないと思うからだ。

2018年11月08日